くるまれている姿は、まるで赤ん坊のようだ。大事にひとつずつ包まれて、見つけるとつい見てしまう。
色んな味の小さな飴ちゃん。
色んな場所で、その子は登場する。
電車の中、教室、事務所の中、そっと手渡される秘密の合い言葉。
「ありがとう。」
扉が開いた瞬間。
小さな鍵は溶けてなくなるけれど、開いた扉はそこにある。
閉じたり、開いたり、ノックしたり、そっと側に立ってみたり。街中の扉が息をしている。
今も、開いたり閉じたりしている。
焼きそばを焼いたら、ソースの香りがドアから出ていく。
カレーの匂いは空気を染める。
おいしい匂い、知らない匂い、落ち着く匂い。それらはみんな、私達の中にある。
ドア。ここにあるドアはどこへの入り口だろう。